ソラマメブログ

2010年07月09日

ササノハ

おれは届けるべきブツを持って徘徊していた。
そして雨の降りしきる中、朦朧とした意識の中で
巨大建造物へとたどり着いた。
どうやら数百名が共同体として暮らしているらしき
十階建ての建物へと足を踏み入れた。
入り口にはロックが掛かっている。
セキュリティーシステムも万全な危険な建物だ。
事前に聞いていた暗証番号をおれは入れた。
語呂合わせにするのも恥ずかしいその番号を赤面しながら
おれは入れた。
正直、心の中では泣いていた・・・。

急激なゲリラ豪雨にその身を貫かれ、もう立っているのも
やっとというような足取りで八階へと向かった。
しかし、届けるべきブツは既に豪雨の餌食となり、おれは
死を覚悟しながら扉を叩いた。

しかし・・・、どうやら受取人は不在のようだった。
「畜生!指定された時間に危険を潜り抜けて来たのに
 この仕打ち。神は我を見放したのか!?」
おれは自問自答し、その場に崩れ落ちた。
だが、途切れ途切れになる意識の中でもそのブツを持って
帰らなければ任務終了とはならない。
悔し涙と鼻水を垂れ流すのをおれは気にしている余裕もなかった。
そして建造物の入り口付近までなんとか辿り着いた。

ふと上を見上げると、笹があるではないか。
そうか・・・七夕が近いのか。
そういえば昔、おれも七夕には短冊に願いを・・・。
そう思いつつ
目の前で輝くように揺れている短冊達に、祈るような思いで
かつ薄れ行く意識の中で眺めた。

「サッカー選手になりたい!」
W杯が開催されているもんな。
「将来はプリキュアになりたいです」
これを書いたのはいたいけな女の子に違いない。
「カレーを腹いっぱい食いたい!」
これを書いたのはいたいけなキレンジャーに違いない。

その中でふとひとつの短冊が目についた・・・。
そこにはカタカナで小さくか細いフォントでこう綴られていた・・・。

「スミマセン」

おれはやっとのことで保っていた、最後の意識が遠退いていくのを
感じた・・・。

Posted by 怪人H at 06:58│Comments(0)
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。